『骨関節炎の負担:1990年から2050年までのグローバルな視点』

  • 2024.1.29
  • ∵ 整体

背景

成人において最も一般的な関節症である骨関節炎は、慢性的な痛みや運動能力の低下といった特徴を持ち、40歳を超えると頻度が増加します。WHOによる「健康な老化の10年」の指定は、このような病状への対応の重要性を浮き彫りにしています。骨関節炎は他の慢性疾患と共存し、健康上のリスクを増加させる可能性があります。

方法

「Global Burden of Disease Study 2021」のシステマティックな分析により、1990年から2020年までの骨関節炎のグローバル、地域別、国別の有病率が明らかになりました。この分析には、世界各地の症例データやアメリカの保険請求データが含まれています。放射線学的に確認された症例を基準に、膝、股、手などの部位別の有病率が推定されました。また、障害と共に生きた年数(YLD)の計算により、症例の重症度が評価され、2050年までの予測が行われました。

所見

2020年には、全世界で5億9500万人が骨関節炎を患っていると推定され、これは世界人口の7.6%に相当します。1990年以来の総症例の増加率は132.2%に達しています。特に膝の骨関節炎の症例が多く、高BMIが重要なリスク因子として挙げられています。全世界の年齢標準化YLDの率は、1990年から9.5%増加しました。高齢化の進行に伴い、70歳以上の成人では、骨関節炎がYLDの原因として第7位にランクされています。

解釈

骨関節炎によるYLDは引き続き上昇しており、効果的な治療法がないため、人口増加と高齢化により症例数は大幅に増加すると予想されます。保健システムへの要求が増加する中、関節置換手術などの治療法へのアクセスが限られている地域では、さらなる健康格差が生じる可能性があります。骨関節炎のリスク因子として、レクリエーション傷害の予防や職業上の危険に対する対策がGBDモデリングでまだ検討されていないため、将来の研究での詳細な分析が求められます。

資金提供

この研究はビル&メリンダ・ゲイツ財団、骨と関節研究所、筋骨格系健康のためのグローバルアライアンスによって支援されました。これらの機関の貢献により、骨関節炎の影響とその予防、治療に関する重要なデータが提供されています。

地域別の視点

この研究によると、地域によって骨関節炎の有病率に大きな違いがあります。例えば、東南アジアでは10万人あたり5677.4の有病率を示し、高所得アジア太平洋地域では10万人あたり8632.7に上ります。このような地域差は、生活習慣、遺伝的要因、医療へのアクセスの違いなど、多くの要因に起因する可能性があります。

今後の展望

この研究は、骨関節炎の負担が今後も増大することを示唆しています。特に、高齢者の増加に伴い、骨関節炎の患者数はさらに増加すると予想されます。効果的な予防策と治療法の開発は、今後の医療の重要な課題となるでしょう。また、健康格差の問題に対処し、すべての人々に質の高い医療を提供することも重要です。

結論

「Global Burden of Disease Study 2021」は、骨関節炎のグローバルな影響とその将来の傾向を詳細に分析しました。この病気は、成人の健康と福祉に重大な影響を及ぼすため、予防、治療、そして公衆衛生政策の改善が急務となっています。今後の研究と政策立案において、この研究の成果が重要な基盤となることでしょう。

 

このブログ記事は、「Global Burden of Disease Study 2021」の分析結果に基づいて、骨関節炎の現状と将来の予測について詳しく解説しています。骨関節炎は成人の生活の質に大きな影響を及ぼす重要な健康課題であり、その理解と対策がこれからも必要とされています。

参考文献:

Lancet Rheumatol 2023 Sep; 5(9)

他の文献紹介:

骨関節炎患者に希望をもたらす新研究:運動療法と患者教育の効果

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